「コーチングに正解はない」し「クライアントを想う強い気持ち」の大きさに経験は必要ない

森謙吾 1968年生まれ
ココログミ株式会社代表
2017年ココログミ開設
株式会社日本ブレーンセンターでトップセールスマンとして活躍後、株式会社ケイアンドを設立。広告代理業務、グラフィックデザイナーとして活動。デザイン書籍の執筆、デザイン指導も手がける。ITコンサル、WEB制作、教育・医療機関等のマネジメントや営業コンサルティング等にTA理論、心理学をとりいれた独自の組織コーチング(CSS)を展開し、“必ず成果を出すセールスコーチ”として活躍中。(取材日:2017年1月)
人生最後の賭けだったコーチング
「コーチング」との出会い、コーチングをやろうと決めたいきさつを教えてください。
出会いは2005年頃だったと思います。当時、私は会社を経営していたのですが、前職の上司の下村さんが会社に来られて、コーチングというものを始めたと聞いたんです。その内容を伺うも、なんとなくしか理解できませんでした。 しかし、とても尊敬する上司でしたので、よくわからないながらもきっと良いものなんだろうと思いました。
いろいろ話すなかで、コーチングを学び始めたばかりの下村さんの練習台としてクライアントをやってほしいということになり、その場で快諾しました。このとき初めて、コーチングクライアントの体験をし、コーチングというものを体感しました。
私がコーチングを、コーチとして始めたのは、それから7〜8年後のことです。
26歳の時に独立起業したのですが、その経営は全然うまくいかず、十数年苦しみ、もう何もかも終わらせたいと人生を諦めようと考えた時に、再び下村さんとお会いしました。相談にのってもらっている中で、下村さんのそばにいれば何かが変わるかも、と感じたんです。その当時、下村さんはコーチングスクールを運営しておられたので、そのスクールに入ることにしたのです。
たまたま下村さんがコーチングスクールをしていたのでコーチになりましたが、もし違うことをされていれば、例えば催眠術スクールをしていれば、私は今頃催眠術師だったでしょうね。(笑)
「コーチング」は本当に素晴らしいと感じた実体験、またその際どんな気づきがあったのかを教えてください。
その下村さんのクライアント体験で、コーチングの素晴らしさというか、高い効果性を体感しました。
その当時の私の経営状態もひどいものだったのですが、それについては一切触れず、コーチングで扱ってもらったテーマは私の内面的課題でした。
長年抱えていた課題で、克服したいと思ってはいたものの、諦めている自分もいました。それが、下村さんのコーチングによって勇気づけられ、自分ひとりでは考えつかないチャレンジを毎週繰り返しました。
週1回の電話でのコーチングセッションだったのですが、毎セッション、チャレンジしたことを下村さんに報告すると本当に承認してくださり、一緒になって喜んでくださるので、私はうれしくなって、宣言した以上のことを毎回チャレンジしていきました。
「承認されることの歓び」と、そこからの「自発的な行動を促進する力」は身をもって体験しましたね。
あと、何より私と下村さんの関係、つまりコーチとクライアントの関係性の重要性も強く感じました。
そもそも、自分の内面的なテーマで、その課題を長年私は卑下し、嫌悪し、恥ずかしいと思っていたものなので、それを開示する時は勇気がいりましたし、それを聴く下村さんの反応にとても敏感でした。そして開示した後も、そのテーマを扱ってもらっているセッションでの下村さんの反応には常に過敏でした。
「どう思ってるんだろう?」「変に思われていないか?」と。
しかし、下村さんは変に思うどころか、いつも親身で、ずっと味方でいてくれているのが伝わっていました。「味方でいてくれる安心感」「ジャッジされない安心感」を強く感じていました。

今思うと、コーチングを学び始めたばかりの下村さんの、そのコーチングスキルは決して熟練されたものではなかったはずです。しかし、客観的に見て、あの時のクライアント体験で私はすごい前進・変化をしていったのは事実で、その要因はスキルやテクニックよりも、私に関わる下村さんのマインドだったですね。
これらの実体験が、今のコーチである私の礎になっているのは間違いないですよね。
有償クライアントを獲得しようと思った…つまり「プロ」になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
下村さんのやっていたコーチングスクールは、ただコーチングスキルを教えるところではなく、“稼げる”プロコーチ養成の学校だったんです。具体的には「1,000万円を稼げるプロコーチを輩出する」ことを謳った学校だったんです。
すなわち、受講することはプロコーチを目指すことだったんです。
有償クライアントを獲得するプロセスで「難しかった」「大切にした」ことがあれば教えてください。
あのスクールに入った頃は、「難しい」とか言ってられない状況でしたから。やるしかないってね。さっきお話ししたように、もう人生を自ら終わらせようとしていた人間が最後に賭けたものですからね。
受講料を一括で支払うお金は我が家にまったくなかったわけで、それを分割払いにしてもらっていました。
なので支払うためにも、稼がないとダメだったんですよね。その分割の額も中盤くらいまではしんどい状況で、その状況でも妻はその出費を快諾してくれているので、やるしかないんです。
頑張っているだとか、苦しんでいるだとか、そのプロセスは関係なかったです。どんなプロセスだろうが、「稼ぐ」という結果しか私には求められていなかったんで。

稼ぐためには、私の販売するコーチングという商品の価値を上げるしかないので、世間一般にいう努力はしました。自分では努力という感覚はまったくなかったですが。
なので、その当時一番大切にしたことといえば、『商品力をつける』つまり『自分のコーチング力をあげる』ことでした。
お金のかからないインプットは何でもしました。あと、コーチは如何に内観し、自分と向き合うかというのが大切だと知り、それまではしたことのない『自分の内に焦点を当てる』ことも、慣れないながらもずっとやっていましたね。
あとは、とにかく“実践(質の伴った量)”が大切だと思っていたので、セッションは誰よりたくさんしましたね。
そのスクールはコース期間の9ヵ月間で、100時間のセッションをこなすというのを目下の目標として受講生に課していましたが、私は230時間くらいしましたね。しかもお相手は、コミットされていない法人の社員さんたちばかり。大変でしたけど、すごく鍛えられましたね。
商品は「クライアントを想う強い気持ち」
有償クライアントを獲得するにあたり、「うまくできたこと」「活かせた強み」などを教えてください。
うまくできたというか、もともと私は営業マンで、自分の売る商品に少しでも自信がないとまったく売れない営業マンだったんです。(笑)
ですから、その商品である「コーチングを学び始めたばかりのコーチ森謙吾」を売るのは、普通で考えると売れないんですよ。商品力がないですから。
しかし、コーチングを学び始めてすぐに、「コーチングに正解はない」ということを学びました。ということは、学び始めたばかりだろうがなんだろうが『コーチ森謙吾』に良し悪しもないということなんです。しかも、「答えは常にクライアントの中にある」とまで言うのです。信じていればクライアントが自ら気づき、動き出すと。
でもこの教えは、確かに過去の私の下村さんとのコーチング体験が実証してくれています。となれば、テクニックではなく、『クライアントを想う強い気持ちがあれば“良い商品”なんだ』と思うに至りました。
なので、もともとの不退転の状況もありましたが、「コーチ森謙吾」のことを話す時は、誰に対してもまったく臆することがなかったですね。
コーチに必要だと学んだ「クライアントを想う強い気持ち」の大きさ、それには経験は必要ないですから、自信をもてました。今もですけど、当たり前のように「あなた以上にあなたを愛しますよ」と思っていました。
有償クライアントを獲得するに至るために、必要だったものを3つ挙げるとすれば何でしょうか。

まずひとつは、商品である「コーチング=コーチである自分を信じること」です。これはコーチングに限ったことではないですよね。信じられないものは売れないですから。『コーチングに正解はない。必要なのは誰よりクライアントを想う強い気持ち』というのは、私からすれば非常にありがたかったです。(笑)
ふたつ目は、ひとつ目と被るのですが、「クライアントを想う強い気持ち」ですね。これも、コーチングに限ったことではないんですけどね。ただ、コーチングの場合は、成果に直結するというか、その強い想い自体が商品ですからね。
最後は「プロコーチになるんだという強い想い」です。いわゆる“覚悟”ですね。一般的には、「なりたい!」と思う強い気持ちなんでしょうけど、私の場合は、「変わりたい!」の想いを達成する手段がコーチングでしたね。
3つ挙げていただきましたが…その中でも一番大事だったと思われるのはどれでしょうか。
う~ん、ひとつ目とふたつ目は同じくらい大事というか必要不可欠なんですけど、あえていうと、ふたつ目の「クライアントを想う強い」気持ちですかね。くどいですけど、この想い自体が商品、コーチングですから。
一番大切だと思われている「クライアントを想う強い気持ち」ですが、その想いはどこで、どんな体験で培われたのでしょうか。
一般的にいう「顧客第一」ですよね。これはどのビジネスパーソンも否定できない正義ですよね。社会人になってから、この顧客第一の想いは当たり前のように一貫して想い続けていましたし、人のそれと比べられるものじゃないですけど、昔から常に自分の“真ん中”にあり続けていた感じです。
この気持ちがあるから、当たり前のように「すべてのお客様と公私共々一生のお付きあいをする」という覚悟が備わっていました。昔から根付いている部分なんでしょうね。おかげで(だと私は思っていますが)クライアントのリピート率は今も昔もかなり高いです。
クライアントのために、どれだけ自分も前進・成長できるか
有償クライアント獲得後は、「継続」フェーズとなりますが、「継続するために」何を大切にされたのでしょうか。また「難しかったこと」なども教えてください。
当たり前ですが、継続の絶対条件は「クライアントが納得する成果をあげること」です。
お話ししたように、クライアントは法人さんのコミットされていない社員さん、特に営業マンが大半を占めていたんです。しかも売り上げをもっと上げたいクライアントばかり。ただ、売り上げアップのオファーをされるクライアントの営業マンは、いわゆるデキる営業マンは多くはないのです。だから、そのオファーなんです。
コーチングで、クライアントが納得する成果をあげるには、クライアントにだけベクトルを向ける必要があります。これが継続には大切というか、これができていないと継続しません。

コーチングを始めた頃は、笑顔で彼らの話を聴きながらも、私も過去は営業マンだったので、アドバイスや時には叱責をしたくなるのです。しかし、初めはほとんどの方がコミットされていません。仮に私がアドバイスをしても聞くどころか、反発されます。
アドバイスやましてや叱責をしたがること自体、ベクトルがクライアントに向いていませんし、そもそもコーチングになっていないことは頭ではわかっているのですが、始めた当初はこの「反応してしまう自分の感情」が障害でした。ネガティブな感情はいくら隠しても、間違いなくクライアントに伝わっています。
クライアントを受容できてないこの状態を修正するには、「反応する自分の感情」に向き合うしかないのですが、この営業という領域では「自分の持ち出したくなる価値観の数とその量」が多いので、向き合うのは大変でしたね。
コーチングが嫌になったり、辞めたくなったりしたこともありますか?「プロコーチ」でいつづけられる「最大のモチベーション」は何でしょうか。
コーチングが嫌で辞めたくなったことは一度もありません。ただ、クライアントの前進成長のために関わる手段として、極めて効果の高い手法として、コーチングをしているだけで、それに代わるさらに良いものが現れれば、いつでもコーチングを辞める用意はあります。“クライアントのため”が目的であって、コーチングをすることが目的ではないですからね。
なので、プロコーチで居続けられる最大のモチベーションは、「目の前にいる、前進成長するクライアントの存在」ですかね。
長く「プロコーチ」で居続けるために、大事にしていること、工夫されていることなどありましたら教えてください。
コーチがクライアントに提供しているのはコーチングセッションであり、コーチの在り方だと思っています。
なので私は、コーチングでいただくお金は1セッション○○○円の「セッション料金」ではなく、「契約期間あなたのコーチであること」にお金をいただいています。
セッション日以外に何かあれば相談できる存在であることもそうですが、「コーチならこんな時どうするだろう?」「コーチがやっていたあのやり方、考え方をしてみよう。」とセッションの時以外にもモデリングされる存在である必要があります。
だから、「コーチはクライアントと対等」というひとつのコーチング定義があるんです。
コーチの存在、その在り方が雲の上のもの、手の届かないものとされては駄目なんですね。
そのために、私自身が不完全である人間であることを自己開示していますし、でも現状にとどまらずに自分自身が変化、チャレンジし続けていることも示しています。
クライアントには常々、「さらに上はあります。さらにご自身が歓ぶ状態があります。それを一緒に探しましょう。」と言っています。これを言っているコーチの私が止まってちゃダメですからね。
今、私は幸せですが、自分がさらになりたい姿、さらに在りたい姿があることを知っています。なので、自分で気づく範囲での制限を取り外し、それを探し続けています。自分で気づけないものは教え子や仲間に気づかせてもらっています。
今後どうなっていきたいとお考えでしょうか
引き続き変化し続けたいですね。
今思う「なりたい姿」を目指して、それを達成した後、もしくはそれを目指す行動の中で、またさらになりたい姿を見つけてはそれを目指す…この繰り返しを、生涯ずっとやっていきたいですね。
で、今やりたいと思って、目下目指しているものは、
- 『自身が整い幸せで、そして安定して周りに強い好影響(幸せ)を与え続けられるプロコーチ』
- 『自身が整い幸せで、コーチングマインドとスキルをビジネスそして日常にパワフルに活かし、周りに強い好影響(幸せ)を与え続けられる人』
を2023年の10月までに100人輩出するという目標を立てています。
これは去年2016年に立てた目標で進行中です。ココログミのサイトもそれを目指す活動の一環です。
子供の時のいろいろな体験から、その頃に思っていた「みんな仲良くなってほしい」をコーチングと出会ったおかげで実現できると思えてきたんですね。

絶対とは言い切れませんが、今は、自分の生きる目的は「みんな仲良くなってもらう」じゃないかと思っています。そのためには『自他の受容』が必要だと考えています。私の定義ではコーチングマインドは『自他の受容』を伝え、広め、叶える力を持っていると思っています。
私が生涯かけて直接コーチングできる人、関われる人の数には限りがあります。なので、世の中の人がすべてそうなるのは私が生きている間では無理ですが、意志を引き継ぐ人を育て続けることで、私が死んだ後もそれは広がり続けて、何百年後かわかりませんが、それが叶うことを願っています。
ただ、これも今思うやりたい事で、この行動をしていく中で、またほかにさらに目指したいものが見つかるかもしれません。生きる目的も変るかもしれません。
この先、私がどうなっていくのか、どう変化していくのか想像もつきませんが、それが楽しみでならないですね。
お時間をいただきありがとうございました。




