コラム

プロコーチ自身が、お金を払ってコーチングを受けることの必要性

– そのお金は“何”に支払ったものなのか –

あなたが3ヵ月合計9万円のコーチングフィーを設定したいなら、もしあなたが6ヵ月更新で合計30万円のセッションを提供したいなら、その同額・同期間のクライアント体験をして、そのコーチングでクライアントが望むモノ、そして得られる価値を体感してください

目次

支払うことで生まれる“意識”の差

コーチの方々は、スクール仲間やコーチ仲間と、日々セッションを重ねられていることと思います。そして、そのセッションは無料、または通常単価よりも安い価格で設定されている方も多いのではないかと思います。

仮にそのセッション1時間に、3万円を支払うことになったら、何が、どう、変化するでしょうか?

無料(または安価)だったものに3万円を支払うことになる。それだけで、下記のようなことを考えるのではないでしょうか。

  • クライアントとして、この1時間でできうる限りの最高の成果を得たい
  • 3万円の元が取れるテーマを扱ってもらいたい
  • 時間内にできる限りたくさん引き出してほしい
  • 同じお金を払うならこのコーチより、あのコーチにやってほしい

中には、「このコーチのセッションが3万円分の価値があるかどうか、判断しよう」といった姿勢で、セッションを受ける人もいるかもしれません。

誰でもそうです。無料でご馳走してもらった料理にああだこうだと言う人はいませんが、3万円支払った料理だと、鮮度や味付け、素材や見た目に留まらず、接客、食器や飲み物のセンス、さらには立地の良さ、居心地の善し悪し、最後にはオーナーの考え方や生き方にまで目がいくものです。

それが料理であろうと、コーチングであろうと、同じです。

お金を支払うと、支払った人は「その金額に見合うものかどうか」を判断します。そして、無料で振る舞われた時は「味」にしか目がいかなかったことが、お金を支払った途端に「味」「素材」「鮮度」「見た目」「食器」「接客」「センス」「立地」「居心地」「オーナーの考え方や生き方」にまで目が行き届くのです。

人にはそれぞれ、自分にとっての「3万円」の価値観(求めるレベル)があることがわかります。お金を支払うお客の当然の欲であり、ジャッジであり、権利です。

一方、提供する側も、“無償提供”と“有償提供”とでは意識やパフォーマンスに差がでて然りです。

“何”に支払ったお金なのかが見えてくる

例えばあなたが、月1回1時間×3ヵ月、合計9万円のコーチングフィーを設定したいと考えていて、知り合いの信頼するプロコーチに、同じ条件でのコーチングを3カ月受けたとしましょう。

あなたは、支払った9万円の価値に見合う「テーマ」を設定し、「ゴール」をイメージし、「積極的な」クライアントとなり、「何かに気づきたい・前進したいという強い欲と期待をもって」コーチングを受け、セッションを受けている間、または、3カ月が終わった段階で、このコーチングに9万円の価値があったのかどうかをふり返るでしょう。

設定したゴールにどれほど近づいたのか。

ゴールに近づけたのはなぜなのか。

自分の原動力になったのは何だったのか。

コーチがどれほど自分に「寄り添ってくれていた」のか。

コーチがどれほど自分にだけ「興味・関心・意識を持ってくれていたのか」。

コーチが自分の可能性を「本当に信じてくれていたのか」。

コーチが自分をどれほど「受け容れてくれていたのか」。

本当の(コーチングが最大限機能する)ラポールとはどんなものなのか。

どのような部分からそれらを感じられたのか、感じられなかったのか。

どんなコーチングスキルが有効で、どの程度必要なのか。

どのようなコーチングマインドで接してほしいのか。

対価を払ってでもお願いしたいと思う「コーチングの成果」とは一体何なのか。

コーチングだからこそできることとは一体なんなのか。

自分のコーチとして、常にどのようなコーチであってほしいのか。

クライアントである私自身がどう実感すれば、「この金額でもこのコーチングを長く続けたい」と思えるのか。

つまり、お金を払いクライアントになることは、コーチングの“何”にお金を支払うのかを実感する、つまり『コーチング(フィー)に対するクライアントの不変のニーズを体感する』、大変有効かつ必要な手法なのです。

コーチングの“何”に価値を感じるのかを考える

さらにそれは、自分にとっての「コーチングにおける9万円の価値」とは何か、を考えることです。

当然、人によって考え、思い至るその価値はさまざまですが、実際に自分が9万円を支払うからこそ、求め・得ようとすること、納得のいくものは何なのかを実際に体感し気づくことは、あなたが想像している以上に多く、あなたの今後のコーチングに強い影響を及ぼすでしょう。

それらは、あなたがコーチの立場にもどったときに、目の前のクライアントとどのように対峙するのかの指針となりリソースとなるものです。

私の場合は、コーチングでいただくお金は1セッション○○○円の「セッション料金」ではなく、「契約期間あなたのコーチであること」にお金をいただいています。

私が私のコーチに提供して欲しいのは、コーチングセッションだけではなく、『コーチの在り方』だからです。コーチングセッションで得られるであろう価値と共に、見本となるコーチが常に寄り添ってくれていることに価値を感じ、その対価を支払いたいと思うからです。

コーチ自身が、自分の可能性を心から信じ、常に前進し、幸せだと感じている。

常に私に寄り添い、対等でいてくれ、絶対的な味方でい続けてくれる。

セッションでないときも折々、「コーチならこんな時どう考えるだろう。」とモデリングしたくなる存在でいてほしい。

私自身クライアント体験を通してこう感じたからこそ、私自身がそう在るべく、クライアント、そしてコーチングとどう向き合うべきなのか。何を知り、何を経験しているコーチであるべきか。クライアントに何をどう伝えていくべきなのか、を日々考え実践していくことができるのです。

コーチングの本当の素晴らしさを体感すること

最後に、当たり前すぎるのですが、これが最も重要なことです。

コーチがお金を払ってコーチングを受ける最も重要な理由は、コーチがコーチングの効果や素晴らしさを知っている存在である必要があるためです。

コーチはコーチングを学ぶ中で、自分の可能性をコーチに信じてもらうことでの自発的な前進・成長の経験を大なり小なりしています。その経験があるからこそ、プロコーチになろうと考え、志した人が多いです。

しかしここでいう「コーチングの効果や素晴らしさ」とは、その価格に見合う、「クライアントにとって大切なもの」をテーマとして取り扱った上での素晴らしさと効果です。

コーチングで得ることのできる「素晴らしさ」や「効果」「成果」「対価」=「価値」のバランスを知ることは、そこで見えてくる自分、自分が提供しようとしているものの価値、そして自分の覚悟、コーチングとは何かをあらためて自身に問いかけてみる良い機会となるはずです。

事実、プロコーチとなるときから有償で専属のコーチをつける人は多くいます。現在、専属コーチをつけていない人で、セミナーや研修、書籍への投資と比べて、「お金を払ってコーチングを受ける」ことに対して投資価値を感じていないコーチは、まだコーチングの本当の素晴らしさを知らない、経験したことがない、つまり良質なクライアント体験をしたことがないのかもしれません。もしそうであれば、今の段階でプロコーチとして成功するのは極めて難しいと考えます。

本コラムでは、「プロコーチとして生計を立てるために最低限必要なスキルとマインド」をテーマに、5回に分けてコラムを連載しています。

これらは、プロコーチとして生計を立てるために必要な

  1. クライアントを獲得し
  2. その契約を継続する

この2つを実現するために、最低限必要なスキルとマインドだと考えており、これらについてしっかり理解しておくことが、『プロコーチとして生計を立てる』ために必要だと考えています。

プロコーチとして生計を立てるために最低限必要なスキルとマインド

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