インタビュー

勇気と自信だけではビジネスにはならない。営業的な工夫と進化で「ビジネスチャンスは必然でつくる」

やっつぁん 1965年生まれ
プロコーチ

会社員の傍ら、2013年よりプロコーチを目指すべく、クライアント獲得活動をスタート。現在は、会社員・プロコーチ・6人家族の父、地域ボランティアメンバーとして活動中。当初、会社員を辞めずにプロコーチを目指すことを無意識に卑下していたが、それを強みに変えることで、プロコーチとしての活躍の幅を広げた。一度はコーチングと距離を置くほど悩み、苦しんだが、今では、実践コーチング塾にてサポートコーチとして、コーチを育成する分野でも活躍している。(取材日:2017年1月)

目次

「自分を売って稼ぐ」コーチングとの出会い

「コーチング」との出会い、コーチングをやろうと決めたいきさつを教えてください。

正直、成り行きといえば成り行きでしたね。

10年近く前、仕事や生活の閉塞感から不満タラタラの毎日を送っていて「仕事は辞めて独立してやる!」なんて、よくありがちな想いを抱いていました。とはいえ仕事はエンジニアでしたから商才なんかないですし、物を売るにもお金や在庫をかかえるリスクがある、ならば自分を売ろうなんて考えていたわけです。

当時、自己啓発的な講演会とかセミナーに行っていまして、その中の一人の憧れの講師が「コーチング」を仕事にされていて、その方が行かれたコーチングスクールに行き始めたのがきっかけです。といっても、当時の“憧れ”は、「この人のように注目されたい」とか「しゃべるだけで稼げる」とか、そんな目先のことだけでしたけどね。。。

有償クライアントを獲得しようと思った…、つまり「プロ」になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

サラリーマンの生き方が不満で、元々が独立志向でしたから、当初から考えてはいました。「やる=稼ぐ」と。あとから思えば当時の想いは、甘えとか幻想とか、そんな言葉しか思いつきません。

プロを目指す以上、『お金をいただく(稼ぐ)』ということは、大きな目的のひとつだし、外せないものである以上は、「稼ぐ」という意識を持ってやっていく時期の経験は必要だと思います。が、僕の場合は稼ぐことが目的というか…、そこに執着していたのかなと思います。

あとになって、もう少し現実を知ったり、社会貢献的な意識も出てきて加速することができましたが…「プロ=稼ぎ」ということだけにとらわれている間は、プロコーチ(有償クライアント獲得)までの道のりは遠かったです。

プロコーチとして“本気になる”ことの難しさ

有償クライアントを獲得するにあたり「難しかったこと」をお聴かせください。

あとから思えばですけど、まずは、プロコーチとして本気になることの難しさ。僕自身が何にコミットするかということです。

そりゃそうです。当時は「しゃべるだけで稼げる」がなんてのが憧れでしたから。自分の在り方や本気度は、セッションの質にも当然影響するし、そもそもクライアントに簡単に見透かされてしまいます。

もうひとつは、代金の話をすること自体が難しかったです。

僕のような会社員の場合、黙っていても会社からサラリーがもらえるわけですからね。そもそも、そういうことに慣れてない。売り込みしたら嫌がられる、とか、自分には売り込むだけの価値があるんか?とか…恐怖心でいっぱいで、コーチングセッションに行っても有償契約やお金のことは何も言えずに帰ってくることばかりでした。

勇気を出して言えるようになっても、最初はヘッピリ腰だし、営業的なトークもまったくど素人なので当然都合よく断られて恥ずかしい思いをする。そうすると断られるのがイヤでますますイヤになる、と悪循環でした。

経験を積まれた今では、そういったことはなくなりましたか?

今でも同じような状況になることはあります。結局のところ対策法は「セルフコーチング」です。

「何に引っかかって止まっているんだろう?」とか「なんで動揺しているのかな?」とか。もちろん、可能なら周りのコーチにコーチングをしてもらいますが、それが難しい時は、「じゃあ、〇〇さん(コーチ)ならこういう時どうするだろう?どう考えるだろう?」と考えるようになりました。これもコーチングのひとつのやり方ですが、「あなたが尊敬しているあの人なら、どうしていたと思いますか?」という質問を自分にすることです。

とまぁ、今でも常々葛藤しながら乗り越えていっている感じです。

自分の基本スタイルに気づく・認めること

有償クライアントを獲得するにあたり「大切にしたこと」は何だったのでしょう。

これはその人の環境、価値観、経験値などにもよるけど、僕にとって一番だったのは、焦らないこと。

どんな販売でもそうだけど、確実な信用も信頼もない人から、目に見える物ではないものを、しかも何万円という単位でお金を払って買おうというのは、なかなか現実的でないですよね。

しっかり信頼関係ができた上で、目に見えないものを「見える化」や「感じる化」させて、価値をわかってもらって、やっとはじめてその代金と見合うかどうかの判断をしてもらえる。なので、焦らず「見える化」「感じる化」をする時間を十分とる。それが自分の基本スタイルだということに気づきました。ただ、それを自分のスタイルだと認められるまで随分と時間はかかりました。

実際、信頼を得るのと価値に気づいてもらうことを、1回のセッションでやってしまえる人もいますからね。そんな人の話を聞くと、自分もそうなりたいと焦ることがよくありました。

あとは、事前にクライアントのことや、次回のセッションの目的などを考える時間を持つことですかね。「この人の素晴らしいところはどこだろうなぁ」とか、「アクションを起こしてきたとしたら多分こんなアクション起こしているだろう」とか。

あとは自分の苦手な分野や、反応してしまう分野の話が出てきたらどうするかをシュミレーションしたり、どこを承認してあげられそうかをイメージしたり…。僕がもっともっと人間的に成長すれば自然とそうできると思うのですが、まだ発展途上ですから、事前に意識しておくのは大事かなぁと思います。

有償クライアントを獲得するにあたり「うまくできたこと」をお聴かせください。

契約を断られたりとか、迷われてしまっても1回であきらめないようにしています。

断るには断る理由が、迷うには迷う理由があるからです。そこをきちんとセッションでヒアリングできたら、「なるほどなぁ、そういうことなんだ」って自分が気づけます。

理由に気づくことができると2つメリットがあって、
ひとつは、自分の心にダメージが少ない。動揺せずに済みむこと、もうひとつは、次の手を打てること。次の手とは、無償で続けるとか、回数を減らして減額するとか、単にその方の内面の課題であれば強い愛情がベースのフィードバックで勇気を与えるとか、期間をおくとか。

「断る理由」「迷う理由」に対して、きっちりセッションをすることができれば、有償クライアント獲得へ繋げることができることが多いですね。

有償クライアントを獲得するにあたり「活かせたご自身の強み」などをお聴かせください。

僕の場合、2つあります。

ひとつは独立せずに会社員のままコーチの活動を続けたこと。これは、金銭的なリスクが少ない。つまり、少なくとも経済面で焦りを生まずにすみます。大切にしたこととして、焦らない、と挙げたけれども、焦る理由を経済面でカバーすることで、焦らないようにすることができました。焦らないことで、さっき言った「次の一手」も落ち着いて考えられるし、”待つ”選択もできるようになります。

あとひとつは、僕の持ってる安心感みたいなもの。自分でそう思ってるわけではないけど、仲間のコーチからは、「安心感がある」とよくストロークをいただきます。その反面、正直インパクトには欠けるなぁと思うのですが、インパクトがない分、安心感でじっくりと信頼関係を築けることが僕の特徴なのかなぁと思います。

自分で自分を認めることができるようになるまで

その2つの強みは、いつ頃からそう思えるようになったのでしょうか?

元々僕は「独立プロになっている人が偉い」みたいな価値観を持っていたんですよ。だから会社員であることを、自分の強みどころか、卑下しているところがありました。強みだと思えるようになったのは、ここ1、2年のことです。

なので、何人かに「会社員は会社員の強みがある」と言ってもらっても、なかなか受け入れられませんでした。でも…考えてみたら、会社員しながら、もうひとつのビジネスをするというのは、二足のワラジを履くわけですよね。まして家庭もある。さらに僕の場合はボランティア活動もやっているので、4本も5本も柱があるわけで。それを全部やるって、如何に大変かっていう話です。だから、逆にすごいことだなと受け入れられるようになりました。

もうひとつの「安心感」の方ですが、僕には元々「インパクトがない」というコンプレックスがありました。例えば有償クライアントを一発で決めてこられる方っているじゃないですか。僕には「そのインパクトがない=その人よりも劣る」というコンプレックスです。

けれども、そうでないからこそ与えられる安心感みたいなものもあるはずです。「焦らない」ことと含めて、じっくりクライアントとつき合っていくという面では、僕の持っている安心感(つまりインパクトがない)というのは、すごく強みだなと思いますね。

結局僕は「インパクトがない。会社員だから時間がない。家族がいるから時間も取れない。」と、“ない物”ねだりしていたんですね。
やっと“ある物”に目がいくようになってきました。それを気づかせてくれたのは仲間でした。…気づくのに、5年はかかりましたけど(笑)

気づけたことで、僕はすごく自己肯定感が上がりました。以前は自分をダメだダメだと思っていたのが、そうじゃなくなったので。結局それが自信につながりますし、その自信が、勇気を持って行動することにつながります。そういう意味ではいろんなものがリンクしていますよね。

有償クライアント獲得における創意工夫

有償クライアントを獲得するに至るために、必要だったものを3つ挙げるとすれば何でしょうか?

  • 自信がなくても、商売として契約の話を持ちだす「勇気」
  • 「自信」をもつこと(成果に対してではなく、クライアントに対して本気になること)
  • 営業的な工夫と進化をすること(ビジネスチャンスは偶然でなく必然でつくる)

その3つの中で、一番大事だったと思われるものはどれでしょうか?

「営業的な工夫と進化をすること」ですね。

なんだ、結局営業力かと言われそうだけども、プロコーチとしてやっていこうとされている方は、そもそも貢献欲や向上心が強いと思います。なので、勇気を出したり、クライアントに向き合ってくことは自然とできていくと思います。なので、僕的にはあえて、ビジネスを意識しないとできなかったこれを挙げます。

一番大事だと言われた「営業的な工夫と進化をすること」ですが、それはどういった時に気づかれたのでしょう。

僕は「誠実にいいものを提供してれば自然に売れる」ということを信じてやっていましたが、有償クライアント獲得はあまりうまくいっていませんでした。「本気」で有償クライアントが欲しいと思っていた時、先輩のコーチから『愚直であることは罪』と指摘されて、初めて気づきました。

実は、そういったことは過去に何人かからフィードバックしてもらったことはあったのですが、「本気で有償クライアントが欲しいと思った時」にやっと、その意味に気づけました。

有償クライアント獲得の中で経験された「失敗談」をお聴かせください。また、その場面に戻るとすれば「もっとこうしていれば良かった」と思うことは何かありますか?

有償での契約をものすごく迷っておられた方につき合って、数時間もプレセッションしたあと、契約の結論が出せるまでさらに数時間もおつき合いさせてもらったことですね。その時は契約が欲しい一心だから、数時間もつき合いました。

結局、ご契約はいただいたのですが、継続的なおつき合いにはなりませんでした。

セッションで成果が出るか出ないかはコーチの力量ももちろん必要ですが、ご本人のコミットメント、つまり自律的な心と本気度も大事。それが不足していることが迷いの原因だとしたら、プロコーチとしては、その点に関して気づいていただくコーチングが必要だったかと思っています。

契約は取れ、その時点の僕の目標は達成しましたが、長い目で見た時に、その人のためにはならなかっただろうなと思います。結果的に僕としても、ひとつの継続的なビジネスチャンスを失ったということですよね。

有償クライアント獲得後は、「継続」フェーズとなりますが、「継続するために」大事だなと思われることなどをお聴かせください。

これは失敗談からの気づきですが…。6ヵ月の契約のセッションの期間が終わり、継続するかしないかの話で値上げを持ち出してケンカ別れのようになってしまったことがあります。

その方は仕事と職場の人間関係のことで日々泣き暮らすほどの悩みを抱えておられたのですが、6ヵ月後には昇進試験を受けるまで仕事に対して気持ちが上向き、行動力も得てくれました。セッションにはすごく価値を感じてくれていたので継続を希望されたのですが、元々、かなり破格な契約だったので、この機会に値上げを申し出たところ、どうしても出せる金額ではないと固辞され、僕もその金額にこだわったために、物別れになったことがあります。

最初は少し手の出しやすい金額で契約することもあると思いますが、契約期間が終わる少し前には、次のゴールをしっかり見てもらい、さらに上にいけることを信じていただけるようなセッションが重要だと思います。セッションを継続したい意思を高めていただけることで、価格調整もやりやすく、またタイミングを待つなどの選択肢が広がると思います。

これから目指すこと

長く「プロコーチ」であり続けるために日頃、大事にしていることなどがありましたらお聴かせください。

同じことですが、焦らず、地に足を付けて、日々自分のやっていること、やってきたことに自信を持つように意識していることです。コーチといえども自分のこと関して弱いものです。なので長く続けるためには、いかに自分を自分で律することや、承認することができるかですね。なかなか難しいことですけど。

そうなるとやっぱり、仲間のコーチの存在や助けは本当に大きいです。聴いてもらうことも当然しますし、直接会わなくても、「あの人だったらどう考えるかな?」という視点を加えることによって、如何に解決していくかだけでなく、「見ないようにする」「取り合わない」「捨てる」「手放す」などといった、自分ひとりでは出てこない選択肢を選ぶこともできるようになりました。

では最後に、今後どんなプロコーチになっていきたいと考えていますか?

かっこいい崇高な話をしたいところですが…、ぶっちゃけコレといった大きな志はまだ模索中な感じもします。それこそ、焦らず落ち着いて、日々あるべき道を進むことで見つけていきたいなと思っています。

今は、まず、どんなことにも動じず、人生の出来事や環境などあらゆる制限をうまく受け入れながら、日々やりたいと思うことをやりたいように、健やかに生きる、これが当面のなりたい姿でしょうか。そして、そんな生き様を、クライアントのみなさんにも感じていただき、共に健やかで居続ける、そんなコーチになりたいです。

お時間をいただきありがとうございました。

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